下肢静脈瘤には細かくいくつかの種類があり、種類によって発生する足の部位や見え方異なります。

足の静脈の種類と仕組み

下肢静脈瘤の種類を見ていく前に、足の静脈の種類と仕組みについて説明しましょう。
※まずは静脈(血管の種類)の説明となります。静脈瘤の説明ではないので混同しないように気をつけましょう。
足の静脈は大きく分けて「深部静脈(しんぶじょうみゃく)」と「表在静脈(ひょうざいじょうみゃく)」の2種類があります。

深部静脈

足の中心の方を通っている非常に太い静脈です。
血液は心臓を出て動脈を通って足に流れてきたあとは、表在静脈を経由して最終的にこの深部静脈に集まり、心臓や肺へ戻っていきます。

表在静脈

足の表面を通っている静脈で、特に長いものに「大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)」と「小伏在静脈(しょうふくざいじょうみゃく)」があります。

  • 大伏在静脈
    足首付近から太ももまで通っており、各部静脈の血液を集めつつ上り、太もものつけ根の位置で深部静脈に合流します。
  • 小伏在静脈
    大伏在静脈と同じく、足首付近から存在していて、こちらはひざ裏で深部静脈へ繋がっていきます。

治療が必要になる下肢静脈瘤はほとんどが大伏在静脈と小伏在静脈のどちらかの静脈が原因となります。

下肢静脈瘤の種類について

下肢静脈瘤は、静脈が逆流することによって起きる病気です。
どの静脈が逆流するかによって症状や治療すべきかどうかが異なりますので、タイプ別にご説明します。

伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)

先ほど述べた、伏在静脈の逆流防止弁が壊れて起きてしまう代表的な下肢静脈瘤です。
足首から太ももの内側にかけて走る大伏在静脈にできる「大伏在静脈瘤」と、足首周辺からひざの裏へ通っている小伏在静脈にできる「小伏在静脈瘤」に分類されます。
どちらも皮膚に近い位置なので、逆流した血液がたまるとコブのように盛り上がります。
血液の逆流・貯留によって循環障害を引き起こすため、進行すると手術が必要となります。

側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)

伏在静脈から枝分かれした静脈で、主に2㎜以下の細い静脈で起こっているタイプです。
太ももやひざ裏の血管が膨らんで見えます。
伏在静脈瘤ほどコブが目立たず、逆流している血液の量も少ないため、基本的には治療の必要が無いことが多いです。
しかし、そうはいってもコブが気になる方や早期に治したい方もいらっしゃいますので、そういった方には治療をおこなうこともあります。

網目型静脈瘤・クモの巣状静脈瘤

皮膚直下にある細い静脈が膨らんで青白い色や赤紫色に見えるものを「網目型静脈瘤」や「クモの巣状静脈瘤」と呼びます。
このタイプは、皮膚が盛り上がるようなコブはできず、軽症のケースに多いタイプとなります。
治療をしなくても足に悪影響はありませんが、美容的に改善したい場合は、硬化療法で治療が可能です。
ただし、中には治療が必要な伏在型静脈瘤が合併起していることがありますので、むくみやだるさなどの足の不調がある場合は医療機関でのエコー検査をおすすめします。

陰部静脈瘤

女性ホルモンの影響や妊娠による腹部の圧迫で、足の付け根や太ももの裏側、陰部周辺にできる静脈瘤です。
生理になると足が重くなったり、痛くなったりするのが大きな特徴です。
見た目が目立たないこともありますが症状が強く、悩んでいる女性が多い症例です。
出産後に症状が消える場合があるため妊娠中は治療をおこなわず、出産後半年ほど経ってから症状が残っている場合に硬化療法を実施します。