30歳以上の2人に1人が、発症しているかもしれないほど身近な病気なのに、なぜ多くの人が気づいてないのでしょうか。
それは下肢静脈瘤のコブというイメージが強く、コブがなくとも発症している可能性のある病気だということをご存じない方が多いからです。

見た目ではわからない下肢静脈瘤が存在します

見た目ではわからない

当サイトではコブにはならず見た目ではわからない下肢静脈瘤のことを「かくれ静脈瘤」と呼ぶことにします。
かくれ静脈瘤の中には、足の外観がほとんど変わらない人、もしくはコブがないため静脈瘤とわからない人がいます。

かくれ静脈瘤についてはこちらのサイトがとてもわかりやすいので、参考にしてみてください。
下肢静脈瘤の専門医であり、たくさんの実績があるお医者さんが自ら記事を考えて書かれているクリニックサイトです。
⇒ かくれ静脈瘤とは

見た目ではわからず、症状もなんとなくだるい・むくんでいる気がする程度であれば、病気だと疑う人はなかなかいないでしょう。
実際に運動不足や疲れが原因となるだるさとの区別もつきません。
このように、外見ではわからない状態がもっとも自覚しにくいケースです。
また、見た目ではなにかが変だと思っても、それが下肢静脈瘤だとわからない場合があります。
たとえば皮膚の色だけが変わったり、医療機関で受診しても下肢静脈瘤だと診断されなかったりするケースがあるのです。

多くの男性はおそらく、自分の足の様子を日ごろから気にしている人は少ないでしょう。
しかも、入浴や着替えのとき以外は、足をズボンで覆って過ごしていることがほとんど。
仕事が忙しすぎて足の外観にかまってなどいられないという方もおられます。
これでは、自分も他人も足の変化に気づきにくいですし、たとえ本人が見た目の変化に気づいたとしても、ズボンをはいていれば目立たないので放っておいてしまいがちです。
結局、だるさやむくみが我慢できないほどひどくなってから異常だと気づき、病院へ向かう方が多いのです。

かくれ静脈瘤の特徴と症状

下肢静脈瘤のなかでも、外見にほとんどあらわれず厄介な「かくれ静脈瘤」の特徴と症状について、もう少し詳しくご説明したいと思います。
簡単なセルフチェックだけでは判別できなかった方、不安を感じた方は、こちらを読んで理解を深めていただければと思います。

1.30~50代に多い潜伏期間(コブができる前段階)タイプ

コブなどができていない前段階では、外見や症状ではほとんど判断がつきません。
足になんとなく違和感があっても「ん?少し足がだるいのは、むくんでいるせいかな?」と、日常生活に支障をきたすほどでない限り見過ごしてしまうでしょう。
おそらく若い方は立ち仕事などのせいに、中高年の方も、運動不足や加齢のせいだと考えてしまうため、病気だと疑うのはむずかしいと思います。
この段階で「自分はかくれ静脈瘤かもしれないと」と気づくためには、自分は立ちっぱなしや座りっぱなしの仕事をしていないか、寝ているときにやたら足がつらないか(こむら返り)というような、生活様式や症状が気づくヒントです。

2.原因となっている静脈が枝分かれしているタイプ

静脈がボコッとコブのような立体的な特徴をしていなくても、細い静脈が増えたり、ひどいむくみというかたちであらわられることがあります。
先ほども記したとおり、コブというのは弁の壊れた静脈が膨らんだものです。
この静脈の根本に枝分かれが多い人の場合、1本1本が細くなるので目立つコブになりにくい場合があります。

コブにはならないのですが、多数の枝分かれした静脈を通って逆流した血液がふくらはぎに集まるのでふくらはぎ全体がうっ血した状態になります。
これは「伏在型(ふくざいがた)静脈瘤」に分類される状態で、治療が必要となります。
治療が必要ではない「クモの巣状静脈瘤」や「網目状静脈瘤」と間違える場合があるので注意が必要です。
下肢静脈瘤の種類についての詳細はこちらの記事をご確認ください。
⇒ 下肢静脈瘤の種類

3.肥満によりコブがわかりにくくなるタイプ

肥満によってふくらはぎの脂肪が分厚くなると、とても大きいコブでないと皮膚の上から静脈瘤と判別ができなくなります。
コブができていても、脂肪でフタをしている状態なので表面からでは、わかりにくいです。
肥満の方は、体質的に下肢静脈瘤になりやすいという観点がありますが、静脈瘤になったあとで気づきにくいという点でも要注意でしょう。

4.重症化して皮膚が硬くなるタイプ

下肢静脈瘤が重症化するとかえってコブがわかりにくくなる場合があります。
それは、静脈瘤ができている部分は、血液の流れが悪いため、体内に栄養が運ばれにくく、また体内の老廃物の回収もされにくいので、皮膚の新陳代謝も悪化します。
自然ととれるはずの垢がとれずに皮膚上に残るため、皮膚が硬くなることがあります。

通常は、症状が進行するにつれ、コブは大きくなるのですが、皮膚が硬くなることにより、皮膚の下にコブができても、硬くなった皮膚を持ち上げられず、表面からコブを判断しにくいのです。

5.リンパ浮腫(むくみ)と共存しているタイプ

人間の体内を流れているのは、血液だけではありません。
当記事を読んでくださっている人の中には「リンパ液」や「リンパ管」という言葉をご存じの方もおられるかと思います。
血液は、常に血管内を流れているわけではなく、身体中の細胞に血液の成分である酸素や栄養を届けるために、毛細血管の動脈側で血管から流れ出ることがあります。
そして、細胞に酸素や栄養を届けながら、老廃物などを回収した血液で静脈の中に戻れなかった一部の水分は、リンパ液となり、リンパ管という別の管へと入っていきます。
リンパ管内のリンパ液は最終的に、また血液へと戻っていきます。
 
このようなリンパ管の流れが悪くなったり、血管への回収がうまくいかなくなったりすると組織内のリンパ液が過剰になり、病的なむくみの状態になります。
これがリンパ浮腫です。
リンパ浮腫は皮下組織が厚くなったり硬くなったりするため、皮下にコブがあってもわかりにくくなるのです。

6.過去に下肢静脈瘤の手術歴があるタイプ

過去に、下肢静脈瘤のコブだけを抜き取る手術を受けている場合、外見上ほとんどわからなくなります。
しかし、コブを取ったとしても、大もとである伏在静脈の逆流症状(だるさやむくみ)が残っているというケースがあります。
そこからまた悪化していくこともありえます。
一度コブを取ってしまったら絶対に安心と考えるのではなく、症状を感じた場合は、再度検診を受けることをご検討ください。