自分でできる!下肢静脈瘤のセルフチェックでは、身体のどの部位にどのような外見的特徴が出ていれば下肢静脈瘤の疑いがあるかをセルフチェックできるリストを掲載しました。
ご自分の足をよく眺めて、はじめて下肢静脈瘤かもしれないと気になった方もおられるかもしれません。
このパートでは、実際に都内の下肢静脈瘤専門クリニック(赤羽静脈瘤クリニック様)で実際に実施する診察の手順(2018年4月時点)で、改めて診断のポイントを解説いたします。

問診

問診

まず、自覚している症状や見た目が気になる部分をお聞きします。
自覚症状があるならばいつからか、どのような症状かなど詳しくお聞きします。
続いて、下肢静脈瘤の治療歴やご家族、親族に下肢静脈瘤の方がいないか、仕事で長時間立ちっぱなしや座りっぱなしになっていないか。
食習慣、持病の有無や服用している薬などがヒントになることもあります。
医院で診断を受けられるときは、思い当たることはなんでもおっしゃってください。
また女性の方には出産経験や妊娠の可能性もかならずお聞きします。

診断の準備

診断の準備-短パン

問診が終わると、足先から付け根までよく確認できるような短パンに着替えていただきます。
下肢静脈瘤は立ったり座ったりしている時にコブやむくみが目立つので、診察はどちらかの体勢になっていただきます。
立っていることがご負担になる方もいらっしゃるので、赤羽静脈瘤クリニックでは基本的には座っての診察とし、必要に応じて立っていただくというやり方でおこなっています。

視診

確認視診は、まずご自分が一番気になっている部分から始めます。
過半数の方が、ふくらはぎの血管がコブのようになっていたり、細かい血管が増えてきたという症状ですのでその部分の状態を診ます。
コブの大きさや部位、色などを診ると発症時期や血管の状態、治療が必要なケースかがわかります。
続いて、ご自身で気づかないけれど発症している部分が無いか、ふくらはぎ・くるぶし・ひざの裏側・足の外側・太ももの内側などを見落としが無いように診察します。

気になっていることがコブや細かい血管ではなく、むくみという方もいらっしゃいます。
むくみに対しては、ふくらはぎだけがむくんでいるのか、太ももや足の甲、足首の外側までむくんでいるのか。
またむくみに左右差は無いか、突然むくんできたのか徐々にむくんできたのかなど、一言でむくみと言っても視診や発症の経過によってもかなりの確率で原因が特定できます。

ほかにも湿疹が無いか、足の皮膚が変色(色素沈着)している部分が無いか、潰瘍(かいよう)などは無いかを診ます。
大きなコブがあったり、潰瘍があったりする場合はさすがにご自分でも気が付いている方が多いですが、むくみや皮膚の変色が軽度である場合は、意外と気が付かず下肢静脈瘤を見逃している方も少なからずいらっしゃいます。

触診

血管のコブを触って硬さを調べます。
通常、血管のコブは血流があるためやわらかいのですが、炎症を起こして固まっている方もいらっしゃいます。
これがあると無いとでは治療法が変わりますので、かならずチェックします。

次にコブ以外の部分も触診します。
これは二つの意味があって、ひとつはまだ表面にはでていないけど皮膚の下に血管のコブが隠れていないかを調べる事と、むくみの性状を調べることです。
ふくらんだ血管が皮膚を持ち上げてあきらかなコブになっている状態というのはかなり進んだ状態です。
その前にかならず、皮膚を持ち上げるまではいかないけれど、コブが皮膚の下に隠れている時期があります。
これもいわゆる「かくれ静脈瘤」に入るのですが、そのコブが無いかをしっかり調べます。
むくみの症状というのは、正常範囲のむくみだと指で押してもすぐにへこみがもどることが多いのですが、下肢静脈瘤やほかの病的なむくみの場合は、凹んだあとなかなか戻らないという特徴があります。
また、押したときに不自然な痛みが伴うこともあるので、押して痛む部位があったら、下肢静脈瘤を含めて、なにか病気が隠れていないか疑いましょう。

皮膚の硬さなども診断ポイントとなります。
下肢静脈瘤が進行すると、“カチカチ”とした独特の皮膚の硬さになることがあるので、患者様が痛みを感じないように充分に注意しながら皮膚の硬さをチェックします。

エコー検査

エコー検査

視診、触診でははっきりしなくてもエコー検査をすれば、下肢静脈瘤の有無や進行具合を確定的に診断することができます。
エコー検査は下肢静脈瘤だけではなく、腹部や心臓を診るときにも頻繁に使われますので、みなさんも名前を聞いたことがあるかもしれません。
エコーとは超音波のことで、超音波を身体に当てて、その跳ね返り具合を解析して、映像としてうつす検査です。
プローブという表面が曲面になった器具を身体に当てるだけですので、痛みが無いのはもちろんのこと、身体へ負担を与えずにおこなえる検査です。
このエコーを使って下肢静脈瘤の原因となる静脈を検査します。具体的には、以下の①~④のステップで実施します。

エコー検査の4つのステップ

  • ①深部静脈に血栓が無いかを確認
  • ②伏在静脈の逆流の有無を確認
  • ③伏在静脈の大きさを確認
  • ④静脈の状態によって治療法を決定

①深部静脈に血栓が無いかを確認

下肢静脈瘤の原因となる伏在静脈の検査の前に、足の静脈の本管である深部静脈の検査をおこないます。
これは、深部静脈に血栓(血の固まり)が詰まることで血液が身体の中心に戻れなくなり、二次的に下肢静脈瘤になる場合があるからです。
こういった状態はまれですが、深部静脈に血栓ができている場合は、単なる下肢静脈瘤よりももっと深刻な状態です。
放っておくと、血栓が移動して肺塞栓症などになりかねない状態になります。
ですので、下肢静脈瘤の診察ではかならず血栓の有無を確認します。
この検査をパスして初めて伏在静脈の検査に移っていきます。

②伏在静脈の逆流の有無を確認

下肢静脈瘤の原因となる伏在静脈に逆流が無いかを調べます。
静脈の逆流は重力に従って生じますので、座った状態、もしくは立った状態でおこないます。
太ももの内側にエコーのプローブをあてながら、ふくらはぎを検査者が手で押して離す、という動作を繰り返して逆流を誘発します。
その間、エコー画面で逆流が有るか無いかを判断します。

③伏在静脈の大きさを確認

次に、伏在静脈の大きさを調べます。
正確に太ももの部分で、伏在静脈の直径を測ります。
静脈の中を血液が逆流すると、その血液により静脈が太くなり、血液量が多くなるほど静脈径は比例して太くなります。
下肢静脈瘤は進行すると逆流する血液の量が増えていきますので、この検査によって下肢静脈瘤の進行具合がわかります。

④静脈の状態によって治療法を決定

①~③により手術適応となった場合は、伏在静脈の状態とコブとの関係を評価し、治療部位や治療方法を具体的に決定します。
以上①②③④の手順で、悩みの原因が下肢静脈瘤であるかどうか、またそうであった場合はどういった治療法が適切かを判断します。

もちろんのことですが、足のむくみやだるさ、痛みなどがあってもエコー検査で下肢静脈瘤では無いと判断する方もいらっしゃいます。
そういった方でも検査することに意味が無いのではなく、「下肢静脈瘤でないことがわかる」ことが重要なのです。

実際、検査が終わって「下肢静脈瘤ではありません」とお伝えするとみなさんホっとされます。
ですので、下肢静脈瘤じゃなかったら恥ずかしいという理由で受診をためらう必要は全くありません。
むくみやだるさ、痛みなどで悩んでいる方は抱え込まずに、ぜひ医院で検査を受けることをおすすめします。
検査費用は、健康保険が使えて約3千円程度、時間も約10分程度で済みます。
私は下肢静脈瘤が無いことを確認するのも大事な治療のひとつだと考えています。